「疲れた」と感じたら試したい！薬剤師のためのセルフケア

薬剤師は長時間労働と責任の重さから身体的・精神的に疲労がたまりやすい職種です。ミスが許されない緊張感もあり、疲れがピークに達すると「もう限界」と感じることがあるでしょう。また最近の調査では、8割以上の薬剤師が職場で強いストレスを抱えているとも報告されています。

そんな時こそ、セルフケアを意識的に取り入れて心身をリフレッシュすることが大切です。本記事では薬剤師が疲れを感じる原因や具体的な対処法を紹介し、仕事とプライベート両面から快適に働くためのヒントをお伝えします。

薬剤師が疲れたと感じたときに試したいセルフケア

疲れたと感じたら、日常の中でできるセルフケアを取り入れましょう。薬剤師は目の前の業務に追われがちなため心身の緩急をつける時間が取りにくいですが、ちょっとした工夫で緊張をほぐせます。ここではいつでも試せる簡単なケア方法を紹介します。

深呼吸と簡単なストレッチ

まずは深呼吸でリラックス。鼻から大きく息を吸い、口からゆっくり吐き出す簡単な呼吸法を数回繰り返すだけで効果的です。深呼吸すると脳へ酸素がいき渡り、緊張がほぐれて頭がすっきりします。

その後、簡単なストレッチを。デスクワークや調剤作業で固まりがちな首や肩、背中を軽くほぐしてみましょう。立ち上がって背伸びをしたり、両手を高くあげて伸びをするだけでも血行が促進され、疲労回復につながります。

マインドフルネスとリラックス法

マインドフルネス瞑想も効果的です。急ぎの業務の合間には、1分程度でも呼吸に意識を集中してみましょう。目を閉じるか視線を落とし、息を吸って吐く動きを感じるだけで雑念が減り、リラックスにつながります。

また、日没後や休日には好きな音楽やアロマで心を落ち着ける時間を持つのもおすすめです。香りや音楽は自律神経を整え、心理的ストレスを軽減してくれます。仕事中こそ意識的に「今」の瞬間に集中し、少しでも休息時間をつくる習慣をつけましょう。

趣味や軽い運動でリフレッシュ

休日や休憩時間には、趣味や気分転換を意識してみましょう。読書や料理、スポーツ観戦など、自分が楽しめる時間を過ごすことでストレスから離れられます。短時間でも好きなことに没頭する時間を持つと、気持ちがリセットされて仕事に前向きになれます。

また、ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなどの軽運動もおすすめです。定期的な運動は自律神経のバランスを整え、体力をつけるだけでなく、気分をリフレッシュさせやすくなります。外の新鮮な空気を吸いながら身体を動かすと、頭も整理されます。

信頼できる人に相談する

身近な人に話を聞いてもらうのも大切です。同僚や先輩、友人に「疲れた」気持ちを正直に相談してみましょう。話すことでストレスが和らぎ、意外なアドバイスや励ましが得られることも少なくありません。誰かを頼ることは弱さではなく、むしろ心身の健康を守る上での重要な行動です。

また、インターネット上の薬剤師コミュニティや相談窓口を利用するのも一案です。同じ職種ならではの悩みを共有でき、疲労対策のヒントが得られたり、同じ状況の仲間とつながれたりします。

薬剤師が疲れを感じる主な原因

薬剤師は多岐にわたる業務内容と重い責任から疲れを感じやすい職業です。ここでは疲労につながりやすい代表的な原因を整理しておきましょう。

業務量過多と人手不足

薬局やドラッグストアでは薬剤師が不足しているため、一人ひとりの業務量は非常に多くなりがちです。長時間の調剤業務に加え、OTC販売や在庫管理、会計処理までこなす必要もある店舗もあります。一人で抱える仕事が多いと、休憩を取れないまま長時間働くことになり、心身共に疲労が蓄積しやすくなります。

また、在宅医療や病院で24時間体制に携わる場合もあります。急な出勤要請や残業が続くと体内リズムが乱れやすく、疲れや眠気が解消されにくくなります。

人間関係・職場環境のストレス

狭い調剤室や薬局の店内では、同僚との距離が近く人間関係の影響を受けやすくなります。性格や仕事のペースが合わないスタッフがいると、毎日のコミュニケーションがストレスになることもあります。病院では他職種の医療スタッフとも連携しなくてはならず、意見の違いに気を遣う場面も増えます。

またドラッグストアでは販売スタッフや来店客など、年齢・役割が異なる人と接する機会が多いです。価値観の違いやクレーム対応に神経をすり減らす薬剤師も少なくありません。こうした人間関係の疲れは、仕事全体へのモチベーション低下を招きかねません。

給与・待遇への不満

多忙な業務に見合わない給与や待遇への不満も疲れの原因になります。特に若手薬剤師は業務量の割に昇給が少ないと感じる傾向にあります。努力や経験に対して評価が薄いと感じると、モチベーションが下がり、業務にも疲れを感じやすくなります。

仕事の責任感とプレッシャー

薬剤師は患者さんの命を預かる重要な役割を担っています。どんな小さなミスでも健康被害につながりかねないというプレッシャーは常にあります。特にミスが起きがちな繁忙時間帯や処方例外時には強い緊張感に包まれ、精神的に疲弊することがあります。常に集中を維持し続けることは精神的な疲労にもつながるでしょう。

疲れを軽減する職場での工夫

職場では以下のような対策が役立ちます:

• 1時間ごとに深呼吸・ストレッチで体をリフレッシュする
• 同僚と協力して作業を分担し、忙しい時には助け合う
• あらかじめ休暇を計画的に取るなど、シフト調整で連休を作る
• 薬歴管理やレセプト業務の効率化を図り、作業時間を短縮する

こまめな休憩でメリハリをつける

長時間続けて仕事をすると集中力が低下します。意識的に短時間でも休憩を取るよう心がけましょう。たとえば1時間に1回は立ち上がって休憩し、窓の外を眺める、コップ1杯の水を飲むなどのちょっとした息抜きを挟むだけでも脳がリセットされます。深呼吸を取り入れればさらに効果的です。

同僚との連携と相談

同僚や先輩と仕事を分担し、協力することで負担を軽減できます。調剤や処方チェックはダブルチェックするよう声を掛け合う、混雑時は手の空いた人がフォローするなど、チームワークを大切にしましょう。また、疲れや悩みは早めに共有することが重要です。職場全体で業務量の偏りを減らせるよう、定期的にミーティングを開くのも効果的です。

シフト調整や柔軟な働き方

可能であれば、上司や同僚と相談して働き方を見直しましょう。午後だけ有給を取る、有給をまとめて連休を取る、時短勤務やパートタイム勤務に切り替えるなど、ライフステージに合わせた柔軟な勤務形態を検討することができます。働く日数や時間を調整することで、疲労回復の時間を確保しやすくなります。

仕事の優先順位と効率化

重要度の高い業務から優先的に行い、余裕があるときに時間のかかる業務に取り組みましょう。また、薬歴管理や会計ソフトの効率的な操作方法をマスターするなど、作業の効率化も大切です。ルーチンワークはマニュアル化して手順を統一すると、頭の切り替えスイッチを減らせます。工夫次第で短時間で片付く作業もあるはずです。

疲れの回復に効果的な生活習慣

仕事外の時間に心身を休めることも重要です。睡眠・食事・運動など基本的な生活習慣を整えることで、疲労の回復力が高まります。具体的なポイントを見ていきましょう。

十分な睡眠を確保する

疲労回復に最も重要なのが睡眠です。就寝前にスマートフォンやパソコン画面を見ないようにする、部屋を暗くして休む、寝具の衛生を保つなど、睡眠の質を高めましょう。寝不足になると翌日のミスやストレスが増えやすいです。なるべく毎日同じ時間に就寝・起床するリズムを作ることも大切です。

バランスの良い食事を心がける

栄養バランスが良い食事は体力低下や疲労感を防ぎます。特にビタミンB群やビタミンC、ミネラルを含む食材を摂るとエネルギー代謝が改善し疲れにくくなります。忙しくてもコンビニ食ばかりにせず、できれば野菜やたんぱく質をしっかり取るよう心がけたいものです。食事の時間帯も規則正しくすると体内時計が安定します。

適度な運動で体力をつける

日常的に運動習慣を持つと血流が良くなり、入眠しやすくなったり朝の目覚めが良くなったりします。ジムでの筋トレや有酸素運動で全身を動かすのが理想ですが、時間が取れない場合はストレッチや階段昇降などから始めてもOKです。無理なく体を動かすことで、疲れにくい体づくりにもつながります。

趣味・リラックス時間でメンタルケア

仕事から完全に離れられる趣味やリラックスタイムもメンタルヘルスの一部です。音楽鑑賞や読書、アート、瞑想といった静かな趣味のほか、友人とカフェでおしゃべりするような社交的なリフレッシュも効果的です。定期的に自分の好きな時間を計画すると、仕事の緊張から抜け出すきっかけになりやすくなります。

それでも疲れが取れない場合に考えること

生活習慣や職場環境を工夫しても疲れが取れない場合は、さらなる対策が必要です。ここでは専門家や制度の活用など、少し踏み込んだ対応策を紹介します。

心療内科や産業医への相談

慢性的な疲労やうつ症状が出ている場合は、心療内科や精神科の受診も検討しましょう。産業医がいる職場なら、産業医面談で仕事の負担について相談できます。医療機関で診断書をもらって適切に休職すると、安心して治療に専念できる場合もあります。早めに専門家に相談し、心身の状態を客観的に把握することが大切です。

専門機関や薬剤師支援制度の利用

薬剤師向けのメンタルヘルス支援や相談窓口もあります。各都道府県の薬剤師会や医療機関が提供する相談サービス、また企業が導入する社員支援プログラム（EAP）などを活用してみましょう。同業者同士で悩みを共有できる場も、一歩踏み出しやすくしてくれるはずです。

休職・転職も含めたキャリア見直し

どうしても現職の業務に耐えられないほど疲れているなら、休職や転職を検討することも視野に入ります。休職期間中に体力と精神を回復させたり、働き方を変えることで以前より無理なく続けられる職場を探したりするのも手です。転職する際は自分が何に疲れていたのか原因を整理し、次の職場選びに活かすことが大切です。

信頼できる人にまず相談

最後にやはり、信頼できる上司や先輩、友人に相談することをお勧めします。誰かに話すだけでも気持ちが軽くなることがあります。自分ひとりで抱え込まず周囲に助けを求めることで、新たな解決策が見つかるかもしれません。あなたの健康とキャリアは、誰にも代わってもらえない大切なものです。無理は禁物ですから、勇気を出して一歩を踏み出しましょう。

まとめ

薬剤師の仕事に伴う疲れやストレスは放置せず、早めにセルフケアを心がけることが大切です。少しでも疲れを感じたら、深呼吸や軽いストレッチ、マインドフルネスでリフレッシュすると良いでしょう。趣味や運動で気分転換しつつ、バランスの良い生活習慣を続けることで心身の回復力が高まります。

また、職場での仲間と協力したり、相談窓口や専門医のサポートを利用したりして負担を減らすことも重要です。この記事で紹介した対策を参考に、無理のない範囲でできることから取り入れていきましょう。疲れをため込まず、健康的に働き続けるための工夫を意識していけば、薬剤師としての仕事の質も向上していくはずです。