看護師の転職活動では最近、病院が病院自身で看護師を採用する「直接採用」が注目されています。
直接採用とは転職エージェントや人材紹介会社を介さず、病院側と看護師が直接連絡を取り合って採用手続きを行う方法です。
手続きがスピーディに進むうえ、自分のペースで応募・面接まで進められるなど多くのメリットがあります。
本記事では、看護師の直接採用とは何か、その背景や他の雇用形態との違い、直接採用によるメリット・デメリット、そして直接採用で内定を勝ち取るための具体的なコツを解説します。
病院側の採用ニーズも交えつつ、最新の採用動向(2025年版)に基づいてわかりやすくご紹介します。
目次
看護師の直接採用とは?背景と注目される理由
看護師の「直接採用」とは、病院が看護師を病院自身で採用することを指します。
通常、看護師の転職では転職サイトやエージェント、人材紹介会社を利用して求人情報を得たり応募したりしますが、直接採用はこうした仲介を省き、病院の採用担当者と看護師が直接やり取りして採用が決まります。
近年、看護師不足が深刻化しており、新卒者の確保や中途採用の強化が急務となっています。
厚生労働省の調査によれば、2024年時点で看護師の需要数は約170万人に達し、2025年にもさらに増加が見込まれています。
そのため、病院では求人を増やすだけでなく、採用手法の多様化が進んでいます。
直接採用は、こうした状況を背景に病院側からも注目されるようになりました。
直接採用の定義と特徴
直接採用は要するに、病院が募集する求人に対して求職者が病院の採用窓口に直接応募する形態です。
募集要項への応募や面接の日程調整、合否連絡など一連のプロセスを自分自身で行う点が特徴です。
転職サイトやハローワークで求人情報を見つけた場合も、応募先として病院の採用窓口へ直接連絡をすると直接応募(直接採用)の形になります。
この形態では、看護師自身が自分に合った求人を業者を通さず見つけるため、希望条件に合致する仕事を自分のペースで探せます。
一方で、求人探しから応募・面接・合否連絡まで全て自分が担うため、労力が増えるのも特徴です。
看護師不足による採用環境の現状
日本では高齢化や医療技術の高度化などにより、医療の需要が拡大しています。
特に看護師は医療現場の要であり、常に不足が懸念されています。厚生労働省の調査によれば、看護師の需要は増加し続けており、地域や施設によっては慢性的な人手不足です。
こうした背景から、病院は新卒採用・中途採用をともに強化し、看護職員確保対策を講じています。
中途採用においては、とくに地方の医療機関が人材確保に苦慮しているケースが多いです。
そのため、紹介会社への依存度を下げて直接採用を増やしたいという病院も増えています。
人手不足が続く今、採用手法として直接採用への注目が高まっているのです。
病院が直接採用を増やす背景
病院が直接採用を増やす理由の一つは、紹介会社や人材派遣会社に支払う手数料を削減できることです。
看護師を人材紹介会社経由で採用すると、病院は通常、年収の30~35%程度の紹介手数料を支払います。
そのため、看護師本人が病院に直接連絡して応募してくれれば、病院はほとんどコストをかけずに採用することができます。
また、自ら求人を探して応募してくる看護師は病院への志望度が高いと見なされやすく、採用担当者に好印象を与えることもあります。
さらに、人材紹介会社やエージェントだけに頼ると、幅広い人材の確保や複数チャンネルからの人材選定が難しくなることがあります。
一部の調査では、看護師採用において紹介会社経由の採用比率が50~70%に達する例もあるとされています。
しかし病院側としてはコスト面や迅速性を考慮し、直接応募者と紹介会社経由者の比率をほぼ半々にする目標を掲げるところも増えています。
こうした状況を背景に、看護師の直接採用は病院側からも積極的に受け入れられつつあります。
看護師の直接採用と他の雇用形態の違い
看護師の働き方には、直接採用(正規雇用)以外にも契約社員や派遣社員、パート・アルバイトといった選択肢があります。
これらの働き方はそれぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。まずは直接採用(正社員)と他の雇用形態の主な違いについて理解しましょう。
直接採用と紹介会社経由の違い
紹介会社経由で応募する場合と比べた直接採用の違いをまとめると、主に以下の点が挙げられます。
- 直接採用は病院と応募者が直接やり取りするため、選考から内定までのプロセスが速い傾向にあります。
紹介会社経由の場合、書類提出や面接日程の連絡などの段階で紹介会社を介するため、ワンクッション増えて時間がかかることがあります。 - 病院側は紹介会社に支払う手数料が不要になるため、直接応募者を歓迎するケースがあります。前述の通り、紹介会社経由の採用では年収の約30%が手数料になりますが、直接採用ではその費用を浮かせられます。
- 紹介会社・転職サイトを通す場合、各社が保有する非公開求人を紹介してもらえたり、コンサルタントが求人探しや面接スケジュール調整を支援してくれます。これに対し直接応募は自分で求人を探す必要があるため情報量は限られ、自分にぴったりの求人を見つけるのが難しい場合があります。
派遣・契約社員との違い
派遣社員や契約社員の看護師として働く場合と直接採用(正社員)で働く場合の違いにも注意が必要です。
派遣看護師は派遣会社に雇用され、登録先の派遣先病院で働きます。契約社員は病院と一定期間の契約を結んで働く形態です。
一方、直接採用(正社員)は病院と直接雇用契約を結ぶため、雇用が安定し、長期的なキャリアプランが立てやすいのが特徴です。
直接採用の看護師は、基本的に正社員として福利厚生・賞与の対象になり、院内研修や委員会活動などにも参加できます。
派遣や契約社員の場合、就業先まで派遣会社等が調整してくれる代わりに、派遣先や契約先での福利厚生が正社員に比べて制限されることが多いです。
急な残業・シフト変更などについても、派遣や契約では派遣会社や契約条件に従うケースがあり、責任範囲や制度上の差があります。
正社員雇用の特徴
直接採用で正社員として働く場合は、長期的なキャリア構築や安定を重視できます。給与・待遇面では、派遣やパートよりも一般的に給与水準が高く、賞与・昇給や退職金制度がある求人も多いです。
また病院側も継続的に育てる意識があり、教育研修制度が充実している職場も多数あります。
ただし、正社員として病院に就職すると勤務時間や職場のルールに縛られる部分が増えます。夜勤やオンコールなどフルタイム勤務の担当範囲も正社員向けの比重が増えやすいです。
一方で、仕事の経験を通じてスキルアップできれば、キャリアアップの幅も広がります。
看護師の直接採用のメリット・デメリット
直接採用には大きなメリットがある一方で注意点もあります。看護師自身と病院それぞれの視点を踏まえ、メリットとデメリットを整理しましょう。
直接採用のメリット
- 選考や内定までがスピーディに進む:仲介を介さないため病院と直接やり取りができ、書類提出や面接の日程調整などを迅速に進められます。
- 病院側は紹介手数料を払わずに済む:直接応募者には紹介会社への手数料が不要なため、コスト面で歓迎されやすく、場合によっては採用に有利になることがあります。
- 応募から採用まで自分のペースで進められる:自分にとって都合の良いタイミングで病院に連絡し、見学や面接を調整できるため、働きながらでも無理なく活動できます。
- 意欲の高さをアピールできる:病院の求人情報を自ら調べ応募する姿勢は、採用担当者に強い志望意欲を伝えます。自発的に動く看護師はプラス要素と評価されやすいです。
直接採用では、病院側に紹介料負担が発生せず採用コストを抑えられるため歓迎されるケースがあります。また、自ら応募してくる看護師は志望度が高いと判断され、好印象を与える可能性があります。
直接採用のデメリット
- 求人探しから採用までの手続きをすべて自分で行う必要がある:看護師求人サイトや紹介会社に頼らずに自力で適切な求人を探し、応募書類を送付し、面接日程の調整をするため、手間と時間がかかります。
- 面接日時や条件交渉など応募管理を自分でしなければならない:面接日程の連絡や採用条件の交渉・質問を全て病院と直接やり取りするため、スケジュール管理や書類管理が煩雑になりやすいです。
- 病院の情報が限定されやすい:病院側は直接応募者に良い面を強調する傾向があります。紹介会社に登録していれば担当者から職場の内部情報を教えてもらえることもありますが、直接応募では自分で調べられる情報が限られ、病院の雰囲気や労働環境を客観的に把握しにくい点があります。
- 内定後の辞退・保留が言い出しにくい:面接や見学当日に採用を前提とした話が出る場合があります。「いつから来られますか」と突っ込まれると、検討中の段階でも断りにくくなる恐れがあります。辞退や保留の諾否は自分で伝えなくてはいけないため、精神的負担につながることもあります。
注意点として、直接応募では全てのやり取りを自分で行う必要があるため、選考スケジュールの管理や条件交渉が煩雑に感じられることがあります。特に在職中の転職活動では、限られた時間での調整が必要となる点を念頭に置きましょう。
看護師が直接採用で内定を勝ち取るコツ
直接応募では自ら積極的に行動する姿勢が求められます。応募書類の作成から面接まで、次のポイントを意識して準備しましょう。
応募書類の作成ポイント
履歴書や職務経歴書は病院の採用担当者に最初に見られる資料です。看護師としてのキャリアやスキル、資格、経験をわかりやすくまとめておきましょう。
勤務先や担当科での業務内容、夜勤経験の有無、資格取得年月などは正確に記載します。
特に直接応募の場合、紹介会社の担当者による履歴書添削がないため、誤字脱字や記載漏れがないか丁寧に確認しましょう。
また自己PR欄には自分の強みを具体的に記入します。これまでの勤務で取り組んできたこと(例:新人教育、看護研究、リーダー経験など)を盛り込み、数字や成果の実例があれば示すと説得力が増します。
病院側が求める人材像にマッチする部分は必ず意識してアピールし、一度作成した書類は複数の人に見てもらうなどしてブラッシュアップを図るとよいでしょう。
志望動機と自己PRの作り方
直接応募では、病院が採用したいと思える志望動機と自己PRが重要です。志望動機では「なぜその病院で働きたいのか」を具体的に述べます。
たとえば、病院が持つ専門領域や診療理念、自分のスキル・経験との関連などに触れ、「自分がここで働く意義」をはっきり示しましょう。曖昧な理由ではなく、過去の経験からつながる熱意を伝えると効果的です。
自己PRでは、看護師として培ってきた強みを中心に話します。チームで円滑に連携できる点、患者対応で心がけているポイント、持っている資格(認定看護師や専門部署の資格など)などを列挙すると印象に残りやすいです。
面接と同様、応募書類にも自己PRを簡潔にまとめて記載し、面接で深掘りされても答えられるように準備しておきましょう。
スキル・資格のアピール方法
看護師として保有するスキルや資格は大きな武器になります。直接採用ではこれらを明確にアピールし、病院から求められる人材であることを示しましょう。
たとえば、〇〇病棟での経験や〇〇処置の実績、語学力、またはマネジメント経験があれば具体例を交えると説得力が高まります。
急性期看護や認知症ケアなど得意分野があれば、それを履歴書にも記載し、面接で具体例を説明できるようにしておくと自信につながります。
また、新しい資格取得に意欲的であることを伝えるのも良い印象です。「御院で〇〇の知識を活かし、さらに〇〇資格の取得を目指して成長したい」といった具合に、向上心と病院での貢献意欲を合わせてアピールするとよいでしょう。
交渉のポイント
給与や勤務時間、配属先といった条件交渉も場合によっては必要になります。直接採用では病院側に交渉の機会を持ちかけることもできますが、慎重に進めることが大切です。
まず、給与など交渉したい項目を決めたら、履歴書の自己PR欄や応募書類送付の際に簡単に伝えておく方法があります(例:前職の給与額や希望条件を履歴書に明記する)。また、面接の最後に「条件面についていくつかお伺いできますか?」と切り出し、礼儀正しく確認することも可能です。
ただし交渉する際は、看護師不足が深刻な現状を踏まえ、強く要求しすぎない配慮も必要です。待遇が良過ぎて「条件だけを求める人」という印象を与えると採用側の印象が悪くなることがあります。自身のスキルに見合った正当な要求の範囲で、かつ病院に貢献する姿勢も伝えながら交渉しましょう。
看護師の直接採用の求人の探し方・応募のコツ
直接採用の求人はどのように探せば良いでしょうか。
基本的にはネット検索や求人サイトを活用しつつ、病院側に自らアプローチする方法があります。以下のポイントを参考にしてみてください。
求人情報の効果的な探し方
まずは看護師向け求人サイトやハローワーク、ナースセンター(都道府県の看護職協会等が運営する職業紹介所)で求人情報を探しましょう。
特にナースセンターでは医療機関から直接委託された求人も多く扱われています。
さらに、気になる病院があれば公式ウェブサイトをチェックするのも忘れずに。
病院ホームページには採用情報が掲載されていることが多く、直接応募用の案内や問い合わせ先が載っている場合があります。
また、病院のSNSや求人広告媒体に直接応募の受付窓口(メールアドレスや電話番号)が記載されていれば、そこに連絡することで直接応募が可能です。
履歴書送付と応募のタイミング
求人情報が見つかったら、早めに病院に応募連絡をすることが大切です。
直接応募では、まず電話やメールで採用窓口に連絡し、求人の詳細や応募手順を確認します。見学を希望する場合はこの段階で相談をして日程調整を行います。
応募書類は指示通りに郵送するか、指定されたメールアドレスに添付して送付します。
応募のタイミングとしては、急募求人やキャンセルが出た場合など、医療機関はできるだけ早く人員を確保したいと考えています。
連絡したその場で面接や見学の日程まで決まることもあるため、迅速な対応を心がけましょう。
逆に特定の日程までに応募する必要がある場合もあるので、求人票に応募期限が書いてあれば必ず守ってください。
人脈を活用した求人の見つけ方
病院内や看護学生時代の先輩、同僚との人脈を使って求人情報を得るのも有効です。知人が働いている病院で人員募集が出る場合、紹介してもらえる可能性があります。また、看護師向けの勉強会や交流会、インターンシップ情報を活用することでも、病院側と直接つながるチャンスが生まれます。
さらには、医師会や地域の看護協会が主催する就職説明会・合同企業説明会にも参加してみてください。
そこで病院の採用担当者と顔を合わせれば、そのまま直接応募の交渉につなげることができます。自分から積極的に問い合わせる意欲が、良い求人をつかむポイントです。
看護師の直接採用面接対策とよくある質問
直接応募の場合、面接時に自分一人で対応しなければなりません。病院の採用担当者の質問には的確に答え、好印象を残すために、次の点に注意しましょう。
よく聞かれる面接質問と回答例
- 「志望動機」:例)「御院が◯◯専門の病院であり、私が前職で培った◯◯の経験を活かせると考え志望しました」と具体的な理由を述べる。
- 「自己PR」:例)「チームリーダー経験があります」「認定看護師資格取得に向け勉強中です」など、自分の強みや資格を端的に伝える。
- 「転職理由」:例)「前職では◯◯の治療に携わりましたが、より高度な〇〇医療に挑戦したいと思ったため転職を決めました」と前向きな理由を述べる。
- 「将来のキャリアプラン」:例)「数年後に後進の育成に貢献できる認定看護師を目指したい」など、長期的な目標を語る。
- 「希望勤務条件」:例)「夜勤を含めフルタイム勤務ができます」「家庭都合で土日休みを希望しています」など、事前に希望条件をまとめておく。
経験・スキルをアピールする方法
面接では具体的な業務経験や技術をアピールしましょう。どのような部署で何年働き、どんな役割を担ってきたかを簡潔に説明します。
特に急性期病棟や手術室、精神科など専門性の高い経験があれば強調できます。また、緊急時の対応や患者指導のエピソードがあれば、状況や自分の判断の結果を交えて話すと説得力が増します。
加えて対人スキルやチームワークでの貢献もアピールしましょう。「多職種と円滑に連携できる」「新人教育に積極的に取り組んだ」「退職者がいない部署を維持した」など具体例を盛り込むと良いです。
事前に自分の強みを整理し、面接で自信を持って話せるよう準備しておくことが大切です。
面接での服装とマナー
医療機関の面接では清潔感が特に重要視されます。服装は白または淡い色のシャツにスーツ、女性なら濃い紺やグレーのスーツ、男性ならジャケットとネクタイで決めると良いでしょう。腕時計や最低限のアクセサリーで好印象を与えることができます。
また身だしなみだけでなく、所作やあいさつも丁寧に行いましょう。受付や面接官に会ったら明るい表情で会釈し、面接室では席に着く前に「失礼いたします」と一言添えます。面接中も相手の目を見て話し、聞かれたことには端的に答えるマナーが求められます。
給与・勤務条件交渉の注意点
面接では条件面の質問をされることがあります。給与や勤務シフト、夜勤の回数希望などについては、面接官から訊かれる前に自分の希望を伝える必要はありません。
ただし、面接の終盤で質問の機会があれば、情報として確認すると良いでしょう。
たとえば「月〇回の夜勤サイクルで勤務できます」など、自分の希望を具体的に言えるよう準備しておくと安心です。
条件交渉をする際は、自分の経験や資格に見合った要求に留めることがポイントです。
あまり高い希望を出し過ぎると「条件だけにこだわる応募者」と受け取られる場合があります。
病院側の採用意欲が高いことを踏まえつつ、譲れる部分と譲れない部分を明確にしておき、誠実な態度で話し合いを行いましょう。
まとめ
看護師の直接採用では、自分で求人を探し応募する大変さが伴いますが、その分スピーディな選考や病院との意思疎通のしやすさといったメリットがあります。
紹介会社や派遣にはない自由度があり、病院側からも紹介手数料不要の魅力があります。
直接応募を成功させるには、正確で熱意の伝わる応募書類の作成や、面接でのアピール準備が欠かせません。
また、病院の求人情報を幅広く探し、人脈やホームページを活用することも有効です。
最後に、直接採用の転職活動では自分自身が行動量を増やす必要がありますが、その分「自分の意志で転職を勝ち取った」という達成感も得られます。
2025年の最新動向をふまえ、ここで紹介したポイントを参考に、直接採用での転職活動を進めてみてください。